ここもと米金利の急低下が話題になっている。米景気が全く問題なさそうであり、ISM製造業を始めとする諸指標と米金利の雰囲気が大きく乖離している。ここではISM製造業と米金利のどちらが先行指標であるかを調べてみた。 
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 上図は右軸がISM製造業景況指数、左軸が米金利(ISM発表前日の引け値)である。5年間のデータを並べてみると、差が開いた直近を除くとよく連動しており、矢印が示すように米金利の方がやや先行している。実際、下図でISMと、翌月の米金利との相関(M+1)、当月前日の米金利との相関(M)、発表1ヶ月前の米金利との相関(M-1)、等を過去1年、3年、5年、10年について並べると、各スパンともISM製造業は当月前日または1ヶ月前の米金利と最も相関が高い。直近1年に至っては2ヶ月前の米金利も発表直前や発表後の米金利よりもISMと相関が高い。10年がやや逆相関になっているのは、リーマンショックからQE前にかけて米金利がまだ高かったにもかかわらず景況感が圧倒的に悪かった時が含まれているからと思われる。いずれにしても、ISMの発表後に米金利がその方向に動くというよりも、米金利が次のISMを正しく予想しながら先に動いているのではないかと思える。

 これだけを見ると米金利とISMが乖離している今、ISMが良いから米金利が間違っている、というよりも米金利の方が先行きのISMの悪化を予言しているように見える。ただ、ベスト相関ではないにせよ、ISMと翌月の米金利には8割の正相関が残っている。なお、同じように米国CPIとの相関を取っても似たようなものであったが、こちらは直近で低下しており米金利と連動を保っている。足元は珍しくISMとCPIが乖離した場面にあり、米金利がCPIの方を見ている、とも言える。
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 では米金利に先行する指標はないのかというと、実は中国のPPIが比較的先行していることがわかる。直近3, 5年では中国PPIが翌月の米金利との相関が最も高く、中国PPIが精度が低いながらも米金利の先行指標だった。直近1年では当月と一ヶ月前の米金利との相関が高くなったが、これはチャイナショック後に米金利プレーヤーが中国PPIをよく研究するようになったため米金利市場の効率性が上がったものだと思われる。直近の中国PPIは堅調であり、こちらと比べてもやはり米金利の直近の低下が異常値に見えてくる。まとめると、ISM単体では米金利が間違っていると主張するにはやや弱いが、先行指標(中国PPI)も遅行指標も(ISM製造業)も堅調なのでさすがにこちらが正しそうだ。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。