2017年の一年を通して中国の金融引き締めとその悪影響をモニターしてきた本ブログだが、突然2年前からの冬眠から目覚めたような記事に出会って目が点になっている。

人民元国際化 立ち往生

中国の習近平(シー・ジンピン)指導部がめざす通貨・人民元(総合2面きょうのことば)の国際化が勢いを失っている。中国当局が元安と資本流出を警戒して資本規制を強めたためだ。通貨防衛を迫られるなか、元を使

cny spot
china reserve
 為替レートを見る限り、人民元防衛は1年前に既に中国政府の圧勝、資金逃避させた中国国民と海外勢の敗北に終わっている。今の人民元の強い外貨規制による不便さは、その時に国際金融のトリレンマで自由な資本移動を放棄した後遺症の一つにすぎない。「資金流出の圧力がかかっている」割りには中国の外貨準備高は増加トレンドに復帰している。「日米超える金融緩和」の割りには金利上昇が止まらないではないか。やる気がない両替商が5%の手数料を取るのは別に人民元に限った話ではなく、例えば成田空港でポンドを両替しようとしても同じくらい取られる。

 ただ実際、国際金融投資を考える時に、持ち出したい時に自由に持ち出せない通貨をなるべく保有したくないのは事実だ。基本的に成長への疑念がなくなった人民元において、最大の下落要因は資本規制(及び将来の資本規制への恐怖)そのものである。そろそろ撤廃しても良いと考えているが、2014年の実力から乖離したドルとの連れ高から2015年8月の切下げまで1年間要したように、こちらも惰性でそれ以上の期間にわたって現状維持するだろう。特に、記事で次期PBOC総裁候補で「改革派」として名が上がっている郭樹清・銀行業監督管理委員会主席は2017年のプルーデンス引締めを演出した張本人なので、今後も金融機関への規制、引締めにエネルギーが割かれ、しばらくは通貨自由化どころではないと思われる。

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