久々にBloombergの日高記者の飛ばし記事が話題となった。日銀の金融政策決定会合の数日前に日高記者が飛ばし記事を書いてドル円を大きく動かす、というのが一種の風物詩になっていたが、最近はさっぱり動きがない。日高記者の記事2015, 2016年に何度か大きくドル円相場を動かした実績があるから、日高記者の記事を読んだ他の人も動くだろう、という目論見の下で多くの参加者が動いたため自己実現していたというのが実情であるが、その自己実現幅は回を追うごとに小さくなっている。今回はヘッドラインの割に内容に新意がなかったということもあり、ほぼ完全にスルーされている。 jpy

正常化に向けて将来的に議論を求める声、日銀内の一部で浮上-関係者

日本銀行内で、変化の胎動が起きている。2%の物価目標の達成までなお道半ばのため、現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける必要があるとの認識が共有される中、少数派から金融政策の正常化に向けた意見が出始めている。事情に詳しい複数の関係者への取材で明らかになった。 ...

 WSJのヒルゼンラス記者(そういえばこの人も最近存在感がない)のように執行部がアドバルーンを上げて市場の反応を見たい時に日高記者を使うという見方もあったが、現執行部はサプライズが好きで知られているためそんなことがあろうはずもなく、何よりも日高記者が飛ばした話はその後ほとんど当たっていない。「追加緩和が逆効果」の後にはマイナス金利導入があったし、「銀行へのマイナス金利貸出」もその後実現していない。市場参加者が漠然と考えていそうなことをアクセス稼ぎのために書いていると思って差し支えないだろう。

 逆に、日銀の傷をえぐり円高を煽るような記事が増えたため、日銀の中の反黒田派が日高記者に反対意見をリークしているという話もあり、それが前審議委員だったり以前の総裁だったりするが、いずれも取るに足りない陰謀論である。退任した後になっていちいち関係者のふりをして記者を使って日銀の足を引っ張るような暇人がいるとは到底思えない。

 それとは別に、今回に関しては正常化に向けて議論を求める声があるのは日銀が公表している「主な意見」通りであり、「関係者の声」を引っ張ってくるまでもない。 白川総裁時代からの反対派委員が全員退任した後も、満を持して送り込んだ新しい審議委員たちもリフレ一辺倒になるわけではなく、一部が慎重派に回っている現実は興味深い。たとえその人たちが更に出て行った後もまた別のメンバーが転向するだろう。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。